FUYU-ZAKURA
どんなに寒くても、咲く花がある。たとえそれは小さくても、しっかりと花をつけている・・・。
光輝兄は案外忙しい。
高校のころから友達に囲まれていたけれど、大学にいってもそれは相変わらず以前は結構休みには出歩いていた。
それが最近になって減ったけれど、理由は・・・俺と付き合うようになったから・・・だと思う。俺のそばにいるためにと、いつも彼は時間を割いてくれるんだ。
「光輝兄・・・最近友達と出ないの?」
光輝兄が出歩かないのは、冬だから・・・というわけではない。
本人は夏は暑いから、冬は寒いからと色々理由をつけているけど、そこまで彼は暑がりでも寒がりでもない。
暑かろうと寒かろうと俺が出かけたいと言うと、嫌な顔をせずについてきてくれる。俺のことを優先してくれるのは嬉しいけれど、それで大丈夫なのだろうか。
「ん?結構出てるけどな」
そうは言っているけれど、それも光輝兄なりの気配りだということは俺にはよく分かる。俺が気に負わないように、彼は言葉を選んでいるのだ。
そんな優しさが嬉しいと思う一方で、その絶対的な『距離感』が寂しいと思うときもある。
「いや、日曜は結構ごろごろしてるし・・・」
「俺はどこかの中年か?」
即入った突っ込みに俺は慌てて否定する。光輝兄が中年なんてあるはずがないことだ。
背は高いし、カッコいいし、困ったことに色気もあって・・・『仮に』だらしないようにしていたとしても、全然そう見えないのだ。
「いや、そうじゃなくて!光輝兄日曜はあまりバイトに行かないし・・・」
「ま、寒い中出るのもな。大学の帰りならそんなに気にならないけど。それに・・・休みくらいはお前と一緒にいたいよ・・・」
この人はしらっとこう言ってのけてしまうのだ。
本来光輝兄には同性を好きになるという趣味はない。世間一般で言う『変態』ほどではないとはいえ、ちゃんと女の子に興味があって、以前はちゃんと女の子とお付き合いをしていた。
彼女を見せびらかすようなことはしなかったけれど、偶然見てしまったことはある。
そして皮肉なことに俺が彼への想いを自覚したのはそのときだった。
その片想いが『両想い』になったかは俺にもよく分からない。とにかく好きになったのは俺が先だ。
もちろん俺だって自分がホモだとは思っていない。でも、気づけば光輝兄のことばかり目に入っていた・・・そんな感じだった。
「何でそんなことをあっさりと言っちゃうかな」
「事実だから仕方ないだろう」
と、冷静に言ってしまうのだ。別に計算して出てきた言葉ではない。彼にとってそれは『当たり前の事実』なのだ。だから何の臆面もなくそう言うことが出来る。
だけど、それは俺にとって『当たり前』ではない。光輝兄が何気なく言ったことでも、舞い上がったり傷ついたりして・・・今俺がどれだけ嬉しいか、光輝兄はたぶん分かっていないだろう。
「って・・・そこまで喜ぶことなのか?」
少しくらいは分かっていたらしい。
「そりゃ、喜ぶって」
光輝兄が惜しげもなくくれる愛情だから。そりゃ、普通の男女に比べればそんなに恋人らしいものではない。外に出たって手をつなぐわけじゃない。
それでも俺にとっては何物にも代えることが出来ない大切なことなんだ。
「そうか・・・」
返事はそれだけだった。でも、彼が嬉しそうにしているのが俺にでも分かる。何か言葉を返そう・・・そう思っていたけれど、出来なかった。
急に光輝兄に抱きしめられ、返す言葉が出なかった。
「あー・・・光輝兄・・・?」
これは光輝兄とお付き合いをするようになってから知ったことなんだけど、光輝兄は結構スキンシップが好きだ。最初は戸惑った俺だけど、やっぱり好きな人の腕の中は心地がよくて。
「やっぱり俺は寒がりだな。人肌が恋しくなる」
どうやら俺を湯たんぽ代わりにしているらしい。抱きしめられて嬉しい反面、湯たんぽと同等の扱いをされる切なさもあって。
「人肌って・・・」
「勘違いするな。俺は誰の人肌でもいいなんて無節操な男じゃないからな?」
そんな俺の気持ちがどう伝わったのか、即弁解する光輝兄。別にそれを疑っているんじゃないけど・・・まぁ、いいか。光輝兄に抱きしめられ、細かいことはどうでもよくなってしまう。
「そんなこと、知ってる」
それだけ言って俺は最愛の人の胸に顔をうずめる。顔が見えなくても光輝兄が安心しているのが伝わってきて、髪を梳くその手が優しくて、俺は彼の優しさに甘える。
どんなに寒くても、ちゃんと幸せは咲いていた・・・。
END
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秋山さまより頂戴いたしましたクリスマスプレゼント…vv!!
こんな煩悩だらけの大人のところにもいらしてくださいましたよサンタさーーんッッ!!vv
(このお話のお2人は、秋山さまの書かれているオリジナル小説のキャラクターです)
秋山さま、素敵な贈り物をありがとうございます…!///
寒さの中、ほんのりと心温かくなるお話は、拝読しながら和み癒されるのを感じます…v
ずっと、瞬君の不安が染み出すように伝わってきて、兄に恋焦がれる愛しさと、兄の生活を案ずる気持ちに共感してしまう作品でした。
でも、そんな不安さえも包み込んでしまう兄の想いに、ホッと安心するような感覚を覚え。
きっと、瞬君もそう感じることができたのではないのかな、と思える優しい作品。^^
柔らかく、温かいそんな秋山さまの文章が大好きですv
秋山さま、互いの優しい想い溢れる素敵なお話を贈っていただき、本当にありがとうございました…!!
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