ごめんなさいの言い方
久し振りに喧嘩をした。喧嘩の相手は大月豊太郎。
付き合って1年と2ヵ月の恋人だ。そもそも喧嘩の理由というのが俺のたんなる勘違いとヤキモチ…。
今思い出しただけでも恥ずかしい!
喧嘩の間中ずっと、豊太郎は俺と話さなかった。部活中も教室にいる時も。
話せば軽く相づちはしてくれるものの、全然俺にかまってくれない。
ある意味、無視より痛い。
なので、この寒い一月半ば。謝るつもりで豊太郎を呼び出しそのまま一時間。
一言も喋らずに、アテもなく街中を歩き続けていた。
そろそろ何か喋んなきゃなんない…と思い、口を開こうと決心。しかし、この沈黙に終止符を打ったのは以外にも豊太郎だった。
「あのさー奈津。」
「は、はいっ…!!」
一週間ぶり…?に名前を呼んでくれた。嬉しさと同時に、何を言われるかの恐怖が同居してる…
「寒くなってきた。ってかずっと前から寒い。」
以外にもそんな事を言い、俺に訴える。そりゃ俺だって寒いよ?
「俺んち来い。」
「え?え?」
突然の申し出に少し、頭が混乱する。喜んで行きたいが、今の俺たちの状況じゃ緊張してしまう。
どうこう考えているうちに、豊太郎はドンドン進み、ついには豊太郎の部屋にまでたどりついていた始末…心の準備が―――
「で?何の用?」
べッドに座り、正座をした俺を見下ろす。
その笑顔には笑み。しかも余裕の。
「…わかってるくせに…」
微笑は語っている『もちろん、わかっていますとも。』
「えっと――その――この前はごめんなさい!!」
勢い良く謝罪の言葉を言う。そして、土下座。
「俺のつまんない理由(きもち)で、豊太郎に迷惑をかけてしまい…その…」
まともに顔が見れない。やっぱり呆れられちゃったかも。
豊太郎が口を開くまでに数秒間。人生の中で最も長い数秒間だと思う。
上目遣いで様子を見てみると、案の定、俺を見ていた。
「もういいよ。―ったく、ホントに。それを言うのに一体何日かかるんだ。待ち焦がれたぞ。」
ため息をつかれた。自分の前でされると、嫌なもんだね。
―…やっぱり―
「でも、」
豊太郎は目を細めて、いつもの俺の大好きな豊太郎で続きを行った。
「その理由、結構嬉かったぜ。」
そして俺はすぐに、豊太郎に抱きついてしまったのだ。
END
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