「俺と勝負してみませんか?」
・・・・・・正直、負けた。
俺は、自分の言動にあまり後悔などはしない方・・・、だと、思っていた。
店では今年に入って3ヶ月連続でトップだし。
ホンキで好きだと言って貢いでくれる女の子は数知れず。
車だってぽぉんと買ってくれちゃうマダムが何人も。
それなのに・・・・。この状況、どうよ・・・・・?
昨日常連のまなちゃんが「知り合いなの〜」と、軽いノリで連れてきた男に。
抱かれた挙句、散々イかされて?
しかも腕枕までされちゃって、高級ホテルの最上階で?
あ〜、夜景が一望できてきれいですね〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、
じゃねぇ〜〜〜っ!!
俺は、俺を背後からしっかりと抱き締めて、すぅすぅと穏やかな寝息を立てているこの、10歳は年上だろう男を、起こしてしま
わないように深々と溜息を吐いた。
コトの起こりは数時間前。
いつもは俺にメロメロなまなちゃんが、連れてきた男に対抗意識を燃やしてしまったのが・・・・・
マズかった。
だってさ・・・・。俺の方なんて見もしないで、そのやろーうっとりと見上げてやがる。
ナンバーワンホストとして、それはそれは屈辱的な空間だったわけよ。
確かに。
まなちゃんが連れてきた男は、俺と同業者かと思うほど洗練されて、すんげぇいい男だった。
すらっと高い身長。
さりげーに身に付けてる、ん百万はしそうな時計。
イタリアの某ブランドの、オートクチュールであろうスーツを、何の違和感も無く着こなし。
顔なんて、「モデルさんでしょ?」と断言したくなるほど。
男で、あまつさえホストの俺ですら、視線が合って、ふわっと微笑まれた日にゃあ、あぁそうさ、ドキッとしたさ。
しかしだ。それ以上に、ホストとして男としてのプライドがっ・・・
今となっては、忌々しいプライドが・・っ
俺に勝負を・・・。この、どう見ても、俺より男としてのレベルの高そうなこの男に勝負を・・・・、吹っ掛けさせてしまった。
「俺と勝負してみませんか?俺が勝ったら、明日1日、あなたは俺のものです」
きゃぁっvvというまなちゃんの歓喜の声がさらに俺を煽った。
いっつも女を口説くノリで、ゆったりと足を組んでルイを口に運んでいる男に、にっこりと微笑んだ。
「俺と・・・・?」
一瞬だけ、男がきょとんと目を丸くした。
「あぁ、かまわないよ。じゃあ、もし、俺が勝ったら、君は明日1日、俺のもの、でいいかな?」
長い、しなやかな指でグラスを傾けて、カラン、という澄んだ音を響かせて、フッと微笑んだ笑み。
今思えば、恥もプライドも投げ捨てて、冗談にしておけばよかった・・・・。
その笑顔に見とれたりしないで。
結果・・・・・・。
何杯カクテルを煽っても、ヤツはけろっとしてて。時々まなちゃんと談笑してやがる。
俺だってホスト、酒には少々自信があった。
10杯・・・20杯・・・。ヘルプのアサトが、さすがにもう止めましょうよ?と止めに入る。
「うっせ、邪魔スンナ!」
その手を振り払って22杯目のカクテルを飲み干した直後。
「ちょい、トイレ・・・」
にわかにやってきた尿意に立ち上がった直後、俺の意識は、ブレーカーが落ちるようにブラックアウトして、何も分からなくな
った。
「ん〜・・・・・・。キモチわりぃ・・・・・。みずぅ〜・・・・」
「ハイハイ。今度は水ね。ほら、少し口開けて」
耳に響くバリトンが心地いい・・・。いい声してやがるぜちくしょ〜・・・。とか、頭の片隅で思いつつも、俺は水が欲しくて素直
に口を開けた。
するとそこへ、やわらかい何かが触れてきて、そっと水が流れ込んでくる。
それを俺は、何の疑問も持たずにこくこくと嚥下した。
「・・・っは・・・・・」
しかし。
飲み終えて小さく息を吐いた俺の口は開放される事無く。
なにやらやわらかいものが滑り込んできて俺の舌を擽る。
「んっ・・・ぅ、ぅ・・・?」
あぁ、俺、キスしてんのか・・・、と、ぼんやりした頭の片隅で認識してしまうと。
条件反射とは恐ろしいモノで、その舌を受け止めてちゅく、と絡め返してしまった。
すると。
それまで遠慮がちだった相手の舌が急に勢いを増し、まるで何か別の生き物でもいるように動き始めた。
「フッ・・ん、んぅ・・・・っぁっ・・・」
こんなキス、初めてだった。
口腔内を散々愛撫され、キスだけでイきそうなくらい・・・・。
「は・・・ぁん・・」
「・・・お?」
漸く唇を開放された時に零れた自分の声のあまりの甘さに、俺は自分で驚いて、僅かに正気を取り戻し相手の顔を認識しよ
うと目を凝らす。
「あ・・んた、だれ?」
「おやおや・・・。君が勝負しようと言ってきたんじゃなかったかな?」
くすくすと小さな笑みを含んだ、また、耳に心地いいバリトン・・・・。
「・・・・・・・ああっ!!!」
俺はそこで漸く完全に覚醒して、がばっっと起き上がった。
・・・・とたんに、くらりと目が回る。
「おいおい。まだ無理するな。酒、抜けてないぞ」
そう言いながら倒れこんだ俺の体をぽすりと腕に抱く。
「やっぱ、俺完敗?」
「そ。それで、今日1日俺のもの」
苦笑して見上げた先に、にっこりとこれまた極上笑顔。
「勝負は勝負。いいぜ。好きにして」
「もちろん。しっかりいただくよ」
諦めて完全に体を預けると、何をすんだろねぇ〜・・・、などと、暢気なコトを考えている俺をベッドへ寝かせ、そのまま覆いか
ぶさってくると、首筋にちゅっ・・・と。
「へ・・・?何してんの・・・・??」
「だから、いただくの」
キョトンと尋ねた俺の頬へ、ちゅ、と小さくキスして。また、極上スマイル。
「いっ・・・いただく・・・?」
[大丈夫。天国見せて上げるから。もう、女なんて抱きたいとも思わないようにしてやるよ」
頬に口付けた後、耳元で囁かれた言葉に俺は全身の血がさぁ〜っと引く音を聞いた気がした。
「やっ、ちょっ、待った、いや、まっ・・て、くださいっ!んっ・・んあっ、あっ・・・!!」
ジタバタともがいてみたが、まだ完全にヨッパ状態の体は全く言う事を聞かず。
俺の体は未知の世界へ陥落した。
「ありえねぇ・・・。マジで、ありえねぇ・・・・・」
事の顛末を覚えている限りで思い出しても、やっぱり俺は喰われたわけで。
両手で顔を覆って深々と溜息を吐いた。
「ありえないことは無いだろう?アレだけ善がってイきまくっといて」
突然耳に響いてきた声に、俺はピクリと体を震わせた。
「酒だ、酒のせいだ〜っ!絶対そうなんだぁっ!」
顔を覆ったまま半泣きでそう言う俺の首筋に、再び口付けが落とされる。
「そう?じゃあ素面の今、もう1回試してみようか?酒のせいかどうか」
「あ・・・?いや、それはもう・・、いい、です・・・っ、って、あっ、んあっ・・!」
腕から逃げようとした俺の体は、スーツの下に隠れていた見事に鍛えられた腕に抱きすくめられて身動きが取れなくなった。
「久しぶりにこんな相性のいい体見つけたんだ。今日は1日付き合ってもらうよ。大丈夫。店には今日お休みの許可貰ってるか
ら」
こいつの言ってる言葉がわかんねぇ〜・・・・。とか考えてると、さわさわと手が俺の体を動き回り始め。
「ちょっ・・、まじっ、ありえねぇ・・・ぇっ、あ・・・んっ・・」
俺の否定の言葉は、巧みなこの男の手で直ぐに艶めいた喘ぎ声に変えられ・・・・・。
俺の体は完全にオチた。
そして俺は、この男の言葉どおりの、その後女を抱けない体になった。
・・・・・・・・・この責任、きっちり取ってもらうぜ・・・。あのおっさん。
・・・・・覚悟しやがれ。
んきゃ〜〜!!!vv
ななせさまより、相互記念としてこんなにも萌えファイアーな素敵SSをいただいてしまいましたーーッ!!o(≧▽≦)o
しししかも!このSSは当サイトのTOPとして描いたホストイラストのセリフと関連してくださったということで、
もう嬉しいなんて言葉では足りなさすぎる感激の嵐です!///
ななせさまの書かれる文章は、大袈裟に飾らない文章の中にふんだんに盛り込まれたオイシさのツボがあり、
自然なボーイたち(笑)のやりとりが堪らなくてvv
と本当に大好きで…vv
しっかりと描かれる人物や周りの描写から生まれるリアリティーは萌えも大倍増のぐふぐふMAXなのでござい
ます!o(≧▽≦)o(日本語が不自由ですみません!笑
さらに、ホスト君のこの男としての潔さとか、相手の男性の余裕のあるセリフ・行動に悶えずにはいられない魅力
を感じますよね!!///
ああ〜男としてのプライドをこんなに激萌えな形で打ち砕くなんて、なんと素晴らしくオイシすぎなのでしょうか
堪りませんーーっ!vvo(≧▽≦)o(←この鬼畜がぁ!笑
ななせさま、こんなにも素敵なSSを本当にありがとうございました…!!
自分のイラストからお話を、しかもこんなにも魅力的に書いていただけてこの上なく幸せでございます…vv(*^▽^*)
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