猶一郎さまより誕生日プレゼントに素晴らしい小説をいただきましたっ!!o(≧▽≦)o
全7部(ページ)にわたる超大作!!
物語は2人の少年の視点から交互に展開されており、切なくもあり楽しさも溢れる
ちょっとファンタジーチックなものとなっております♪
わたしはとくに主人公お二方と獏くんのやりとりが、可愛いやらおもしろいやらで大好きvv

これだけでサイトが作れてしまいそうな大作をいただいてかなり恐縮している
タカツキですが、本当に嬉しかったです。
猶一郎さま、ありがとうございました(*^▽^*)
さあ、みなさまもドキドキワクワクムフフンな世界をとくとご覧くださいませ〜vv


作者さまより :
作中に出てくる三島竜幸は、本名がコーリンといいます。
“竜幸”をひっくり返したものを音読みして、コーリン。
(“リン”は“竜胆”のリン。それに、“幸”をコウと読んで、“コーリン”)となります。


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夢の中の夢




久しぶりに夢を見た。

「・・・・・やっべぇ・・・」

・・・・しかも、史上最大級にイミの分かんねえヤツを。

出てきたのは、同じクラスの三島竜幸。まぁ、同じクラスと言っても、話したこともないような奴なんだけど。・・・・そこまでは、まあ・・普通の話だ。

・・・・行動以外は。

・・・・・・・・あろうことか、そいつとヤってる夢だなんて。
・・・・・ありえねぇ・・・。

しかも、なんか、そういう仲のようで。
俺の腕の中で、思う存分乱れてくれちゃったりして。
・・・・耳元で甘い声なんかあげたりして。

「・・・だから、やばいって・・・」
何だよ俺・・・。たまってんのか?
大体、三島なんて別に気にしてたわけでもないのに。
・・・・一体・・・何なんだ・・・・!?

俺は、もう思い出さないと心に強く誓って、学校に行く支度に専念した。
・・・・・朝からサカってたら、話にならない。



「敏郎ーーー、お前遅いっつーの! 何してたんだよ」
学校に着くと、すぐさま隣の安達が話しかけてきた。
「・・・べっつに、何もしてねぇよ」
「本当かぁ?」
・・・・・夢見てただけだよ。ヤバイの。
ったく朝からツイてねぇなぁ。

俺が、ぶつくさ言いながら席に着こうとしていたとき、ドアの方で何かざわついた声があがった。・・何だろ。
振り向くと、そこには、俺の今朝からの頭痛の種。・・三島だ。

三島は、こう言っちゃ何だけど・・・・女みたいに綺麗な顔をしている。
整っていて、口数が少なくて、いかにも“女の理想”って感じだ。だから、言うまでもなくモテる。まあ、告られてうなずいてるのは見たことないが。
・・・別に妬いてるわけじゃないけど。
(・・・そういえば、色もかなり白いよな)
・・・あの肌に痕が残ったら綺麗だろうな・・・・・・ってそうじゃなく!!
・・・・はぁ。どうしたんだろ、俺・・。
「・・・・・!」
やばい・・・! 
いつの間にか、じろじろ見ていたのだろうか。三島が少し不思議そうな顔をして、こっちを見ていた。
「ぁ・・・」
小さな声が、三島の口の中でつぶやかれた。
俺が、少し気まずそうな顔をして三島の方を見ると、三島はすっと顔をそらした。

・・・・ほんの一瞬だけ見えた三島の横顔が、ほんのり赤く見えたのは・・・俺の、気のせいだっただろうか。


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月の美しい晩だ。
俺は、いつものように数々の家を訪ね行く。

・・・木場の家も、そのうちの一つだ。

「・・・・・ぅんん・・・・・・・」

俺が、窓の縁に足をかけたとき、もう木場は眠っているようだった。
・・・・・幸せな奴だ。おかげで仕事がやりやすい。

『・・・いつもながら、寝付くの早いね。こいつ。』
「・・・・ああ」
『えーと・・昨日はここ来なかったよね、確か。二日に一回だし。』
確認するように、他の仲間と比べるとずいぶん小さな体を俺に向ける。
俺は目でうなずいた。
・・・人間の言葉で言うなら、こいつは獏。名前はトロステン・・・俺の大事な相棒だ。『んじゃ、さっそく夢開こっか。』
・・・・よし。仕事開始。
しっかりとうなずいて、俺は息を整えた。

パァァァァァ・・・

俺の指先から青白い光が放たれ、部屋中を照らした。こうすることによって、夢を実体として浮かび上がらせることができるのだ。
それが、俺たち夢魔の能力のひとつだった。
『・・・どう?』
「・・・ん・・大丈夫だ。ちょっと待ってろ、いま見てみるから」
他人の夢を覗けるのも、夢魔ならではの能力だ。これを悪用してはならないと、じいさんから念を押された、最大の・・秘術。

俺たちは、人間の悪い夢を喰うためにここにいる。
夢は、貘にとっては格好の餌だ。昔、貘はそれを狙ってたくさんの人間を植物状態にしてしまったのだという。そして、夢魔は人間の夢を操るのを職業にしていたため、そのことにひどく辟易していた。
そんなときに、条件を付けて夢魔と貘に手を組まさせたのが、俺の先祖だと言われている。
だからじいさんは、俺の教育に余念がない。
そういうわけで、俺の性格も、じいさんの育て方にとんでもなく影響を受けている。
・・・まぁ、それでも、木場の部屋の様子が気になるのは、俺が神経質だからとか、そういうのではなさそうだ。

木場の夢は、いつもとっちらかっている。順序とかそういうものが全くない。
・・そういう点は、部屋と同様に、本人の性格を端的に表していると思う。
・・・・だけど今日は、どこかいつもと違う気がする・・・・。
いつもはすんなりといく“見る”という作業が、映像にもやがかかっていてやりづらい。
「・・・・ぅ・・」
単調に続く寝息がいやにうるさく聞こえていた。・・・そのとき、やっとうっすらと夢が見えだした。

場所は・・・どこかの海岸。そこを、木場が歩いている。誰かが側にいるようだが、視線が合わないために映らない。会話の流れから、どうやら二人でいるらしかった。
・・・・しばらく歩いた後、木場(と誰か)はこの家に帰ってきたようだった。
・・・・・・・・なんだか人のプライバシーを侵害しているようだが・・・仕事だから仕方ない。
(もう一人はともかく、木場はよく喋るなぁ・・・)
俺は、話の方にも耳を傾けた。
「・・・・海ってやっぱいいな〜・・・小学生の時から行ってなかったけど。面白かった」「・・・・うん」
相づちを打ったのはもう一人の声だ。
・・けど、声初めて聞いたぞ?よっぽど無口なのかな。
・・・・・・俺だって、人のことは言えないけど。
「・・あ、つまんなかったか・・?ごめん・・」
「いや・・・そんなこと・・、ない・・・」


・・・・・まさか。



・・・・・・・・・・・・・俺の、声・・・・?



「そっか・・よかった」
にっこり笑って、木場は視線を移した。
うっすら汗をにじませて、赤い顔をしてそこにいた人間は。
・・・・・見慣れた、俺の顔だった。

・・・・・・・まぎれもなく。

「・・・・・」
そこにあったのは、無声のざわめきで。
ふと見ると、木場が“いい?”というように熱を帯びた目で語って・・・・・俺は何も答えることなく目をつぶっていて。

キスをした。

何度思い描いたことだろうか。


・・・・・いったい、何回。


・・・・・俺の夢を見ている・・・・・・? ・・・・まさか。
冗談じゃない。

だんだんと深くなっていくキスに、抑えようもなく体が震える。
・・・・・どうしよう・・。
こんなの、忘れられない。
忘れられる・・・・わけがない。

「・・・・・・ぅん・・っ・・・・ふぁ・・・・」
絶え間なく聞こえてくる水音。意味のない言葉。
・・・・空気の変わる音がする。
・・・・・・・それはまるで、拷問のような・・・激しい駆け引き。

・・・・・どうしたらいいんだよ・・・・・・・。


『めずらしいね、時間かかるの。よっぽど見られたくない夢でもみてるんじゃ・・・』
ひょっこりと顔を出したトロステンに気づき、俺は慌ててその視界をさえぎる。
『うわぁ・・・っ、びっくりした・・・・』
「ごめ・・・いきなりこっち来るし・・」
『・・・で?どうだったのコーリン。』
そして、再びのぞき込もうとしたトロステンを、またすぐさまブロックする。
「べ・・別に?・・普通の夢だったぞ」
『ん・・じゃ、とりあえず見せて。』
「えぇ・・・っ!?」
たちまち赤く染まった俺の顔を、不思議そうにこいつは見た。
『・・・?普通の夢だったんでしょ?』
・・・・・・・今度こそ、本当にどうしよう・・・。

夢魔は貘に当人の夢を見せる。
これは・・・規則だ。

俺が渋っていると、トロステンにタックルされた。・・・・・って、ちょっと、オイ・・!
『・・・・・あ、なるほどー。だから嫌がったんだ。』
「ちょ・・・っ、何見てんだよ・・!」
『良かったね。両思いじゃん。』
機嫌が良さそうに、トロステンが口笛を吹く。
「・・どこが! ・・・っていうか見んなよバカ!!」
トロステンの背中越しに見た、夢の中の俺の傾いでいく体が、なおさら俺の羞恥心を煽る。どうやらコイツは俺の反応を見て面白がっているようだ。
・・・・・この身勝手野郎がぁ・・・・・!!(暴言)

「・・・・・ゃ・・っ・・・・・・あ・・・・!」
夢の中の拷問は続く。
・・・・っていうか、嫌なら抵抗しろォ・・!! 俺!!! 俺じゃないけど夢の中の俺!!!


・・・・・なあ、

・・・・・・・お願いだから。

やめてくれ。変な期待を持ちそうだ。
だって信じられないくらい高ぶるんだ。



             これが、悪い夢なら・・・・


・・・・・醒めないで。
             
             ・・・・・醒めてくれ。


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・・・・・俺の期待は、瞬く間に幻となって消えた。
早く醒めろと思ったのに。
もうこんな夢は見たくないと思ったのに。

・・・・くそ、三島のヤツめ。何か呪いでもかけてんのか?
俺は、自分のせいなのは棚に上げて、夢の中の恋人にばかり悪態をつくのに必死になっていた。



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