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***


・・・・やっぱり。
三島は予想通りの反応を見せた。
面白いやつだよなぁ、三島って。もうちょっとキリッとしてるかと思えば、変なとこがぬけてるんだよな。
それは、今日の結果から気づいたことだ。

「・・・・・へ?」
どういうことだ、という顔で、三島がこっちを見る。
「・・・だからー、一日中、お前を観察してて。そしたらコイツの声がして、利害の一致で手を結んだわけだ」
・・・本当、あのときはビビったぜ。
あらぬ方向から声が聞こえてくるもんだからよ、思わず叫びそうになっちまった。

「・・・・・最初から順序立ててお願いします。」
見るとそこには、何かを諦めたような三島の顔。
俺たちは顔を見合わせて苦笑した。・・・視線が合っていたかは気になるところだが。
三島は、俺らにいっぱいくわされたんだもんな。
「・・・しょうがないな、説明してやるよ。」
そう言って俺は、さっそく、一つの問題を提示した。
「・・・・じゃあ最初に、何でお前は俺が狸寝入りしてたのに気づかなかったのでしょうか?」
これはたぶん楽勝だな。三島は賢いし。

しばらく悩んで、はっと気づいたように三島は言った。
「・・・・・・トロステンが何かやったとか・・。普通に考えて、俺が気づかないわけないし・・・」
ご名答。
「確かにそいつが何かの術かなにかで、寝てるように見せかけておく、とかなんとか言われた気がするな」
おかげで俺はここまでお前をだませてる。
これは俺の側のメリット。

『言っておくけど、コーリン。隠し立てしても無駄だよ、正体はバレてるんだから』
「じゃあ、何で俺はこんな奴に声かけられても、“いる”ってこと信じられたと思う?姿は見えないのに。普通だったら信じないだろ」

今度は難問だからヒント付きってことで。
まあ、最近俺、何でもアリな夢見てきたからってのも理由のひとつだろうけど。
けど、実際に見てりゃあ、いくらなんでも信じないわけにはいかないだろ?

「・・・・もしかして・・・前から気づいてたのか・・?」
遠慮がちに、三島が問う。
「いーや、お前のこと気づいたのはほんの一日前のことだ」
「(・・・ってことは・・)・・・・・・あのとき、起きてた・・・・・???」
「・・・・正解」
その通りだよ。
「もしかして、昨日も今日みたいにずっと起きて・・・・」
「・・あー・・・いやいや。昨日はホントたまたまだよ。なんかでかい音聞こえて、何だろうと思って。まあ、いっつもだったらたぶん寝てたけど、なんか聞き覚えある感じだったから、頑張って眠気と戦って、聞き耳立ててたんだ」
・・・・なんかすごい怪しい言い方。俺って説明とかする脳無いのかね。
「・・そしたら、さっきまで夢で聴いてた声がするだろ。しかもなんか夢魔とか言ってるし。それでこの町を出てくとか言うし」
ホント、話が出来すぎてるよ。夢の中でも、やっとお前の手掴んで捕まえたとこだったんだぜ?
「・・・嘘だろって思ったけど、・・やっぱ、いたな」
「・・・・でも、何で・・・」
「そうだ、あのな、一個だけ聞いていい?」
「え、・・うん」
「お前が、あの夢見せてた訳じゃないんだよな?」
だとしたら、大問題だけど。
「あ、当たり前だろ!!」
・・・だったら。
「何で三島、ここ出て行こうと思ったんだ?」
そこんとこがよく分からねぇ。別に、俺がどんな夢見てようと、さっさと始末しといて後は見なかったふりして・・・とかで、いいんじゃないのか?
『バカだな〜、そんなのも分からずに出ていくの止めるとか言ってたんだ?見てたらわかるじゃん、コーリンはお前のことす・・』
「わーーーーー!!わーーーーーーーー!!!」
トロなんとかが口を開いた瞬間、三島が突然騒ぎ出した。
・・? なんだ?
「何言ってんだよ!!!」
『言ってないよ、まだ。』
「まだって何だよ!!」
・・・・・あ。
「・・・そいつに言われたのは、“お前を幸せにしてやってくれ”ってことだったんだけど」
そう、それが向こう側のメリットで。


「・・・もしかして三島って、俺のこと好き・・?」

もし外れていたら、取り返しのつかない状況。
あるはずのない答え。
だけど・・・だとしたら、全部当てはまるんだ。
「・・・・・・・・・っ」
うおぉ、解りやす・・・っ!
三島の顔が朱に染まる。
・・・・・、くそ、俺まで照れてんなよ。
「・・・・っそうだよ・・! だから何!? 笑いものにでもするのかよ、だから出ていくつもりだったのに!!!」
あー・・・半分パニック起こしかけてる・・?
あのな、俺だって別に言おうと思ってたんじゃねぇよ。ぽろっと気づいたときに言っちまったんだよ。
・・・あぁもう、・・頼むから、泣くなよ?
「違うって・・・嫌なんだよ、そういうの。そりゃ気まずいから避けたいとか、そんなことは思うだろうけどな。お前けっこう面白いヤツだと思い始めたとこなのに、出て行くとか言われたら嫌だ」
ガキみたいなこと言ってっけどさ。
・・・・・・けど、すきとかきらいとか関係なくても、そう思うから。
それが俺を思っててくれる奴なら、尚更。
「・・・せっかく初めて話とかだってしたのに、もったいねぇだろ」
「・・・・・気持ち悪くないのか」
「あー・・そんなん、お互い様だろ。俺のことどうでも良かったら、たぶんさっさと俺の夢なんか喰われてただろうし」
・・・・そう。ホントなら軽蔑してもされてもおかしくない。だけど。
「あ、でも、別に特別すきなわけでもキライなわけでもねぇんだけど」
・・ってとんでもないこと言ってねぇ?俺。
期待させといて・・って思われたかな。けど・・・本心。
「・・・・・・よかった。・・うん、それで良いよ。もういっそ、嫌ってくれたほうが楽だったんだけど」
そう言って、三島は微笑う。
「俺と一緒にいてもロクなことないし、つまんないし、大体、人間と夢魔じゃ、一緒になんかいられないって分かってたし」
・・・・なんか。それで、諦めようとしてた、みたいな。
・・ものすごく、嫌だ。
「・・・そんな、つまんないことでかよ・・・・」
「・・・?」
目の前の顔が、眉をひそめる。
「・・・・・そんなこと言うなら、俺のここ三日の時間を返せ。今すぐ。・・なんだよ、こんな悩ませといて」
「ごめん・・」
「そうじゃなくて! ・・・謝ってほしいんじゃなくて・・。例えば、この人は別の野球チームのファンだから結婚できません、って言ってるみたいなもんだぞ? んーなバカな話があるかよ」
まったく、冗談じゃない。俺はちゃんと気づいたのに。
・・・・少なからずこいつに興味を抱いている自分自身に。
「・・俺にとってはバカな話じゃないんだ。」
『・・コーリン』
「だってそうだろ? 俺は人間じゃないし、男だし! そんなの嫌に決まってるだろ!?」
こいつの、こういうとこ、嫌いだ。
「なに始まってもいない内から終わろうとしてんだよ」
全部、溜め込んで、押しつぶされて、自滅する。
「すきならすきって言えばいいだろ!?男だってんならちゃんとぶつかって来いよ!そんで、当たって砕けろ!」
『いや、砕けちゃ駄目だろ』
はっ・・・いかん。余計なことまで言っちまったみてぇ。トロなんとかのツッコミが容赦なく入る。
「・・・と、とにかくだ。俺は、そうやって諦めてる三島は全くもって好きじゃない。だから、せめて俺に好かれるように努力くらいしたらどうなんだよ」
・・なんかケンカ腰だけど、言いたいのはそれだけだ。
少なくとも俺は、すきな奴振り向かせる努力くらいしてみせる。
・・・・報われなくても。やるしかないし。
それくらいするべきだ。
・・・それからなんだ。




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