[ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 / おまけ ] *** ・・・・やっぱり。 三島は予想通りの反応を見せた。 面白いやつだよなぁ、三島って。もうちょっとキリッとしてるかと思えば、変なとこがぬけてるんだよな。 それは、今日の結果から気づいたことだ。 「・・・・・へ?」 どういうことだ、という顔で、三島がこっちを見る。 「・・・だからー、一日中、お前を観察してて。そしたらコイツの声がして、利害の一致で手を結んだわけだ」 ・・・本当、あのときはビビったぜ。 あらぬ方向から声が聞こえてくるもんだからよ、思わず叫びそうになっちまった。 「・・・・・最初から順序立ててお願いします。」 見るとそこには、何かを諦めたような三島の顔。 俺たちは顔を見合わせて苦笑した。・・・視線が合っていたかは気になるところだが。 三島は、俺らにいっぱいくわされたんだもんな。 「・・・しょうがないな、説明してやるよ。」 そう言って俺は、さっそく、一つの問題を提示した。 「・・・・じゃあ最初に、何でお前は俺が狸寝入りしてたのに気づかなかったのでしょうか?」 これはたぶん楽勝だな。三島は賢いし。 しばらく悩んで、はっと気づいたように三島は言った。 「・・・・・・トロステンが何かやったとか・・。普通に考えて、俺が気づかないわけないし・・・」 ご名答。 「確かにそいつが何かの術かなにかで、寝てるように見せかけておく、とかなんとか言われた気がするな」 おかげで俺はここまでお前をだませてる。 これは俺の側のメリット。 『言っておくけど、コーリン。隠し立てしても無駄だよ、正体はバレてるんだから』 「じゃあ、何で俺はこんな奴に声かけられても、“いる”ってこと信じられたと思う?姿は見えないのに。普通だったら信じないだろ」 今度は難問だからヒント付きってことで。 まあ、最近俺、何でもアリな夢見てきたからってのも理由のひとつだろうけど。 けど、実際に見てりゃあ、いくらなんでも信じないわけにはいかないだろ? 「・・・・もしかして・・・前から気づいてたのか・・?」 遠慮がちに、三島が問う。 「いーや、お前のこと気づいたのはほんの一日前のことだ」 「(・・・ってことは・・)・・・・・・あのとき、起きてた・・・・・???」 「・・・・正解」 その通りだよ。 「もしかして、昨日も今日みたいにずっと起きて・・・・」 「・・あー・・・いやいや。昨日はホントたまたまだよ。なんかでかい音聞こえて、何だろうと思って。まあ、いっつもだったらたぶん寝てたけど、なんか聞き覚えある感じだったから、頑張って眠気と戦って、聞き耳立ててたんだ」 ・・・・なんかすごい怪しい言い方。俺って説明とかする脳無いのかね。 「・・そしたら、さっきまで夢で聴いてた声がするだろ。しかもなんか夢魔とか言ってるし。それでこの町を出てくとか言うし」 ホント、話が出来すぎてるよ。夢の中でも、やっとお前の手掴んで捕まえたとこだったんだぜ? 「・・・嘘だろって思ったけど、・・やっぱ、いたな」 「・・・・でも、何で・・・」 「そうだ、あのな、一個だけ聞いていい?」 「え、・・うん」 「お前が、あの夢見せてた訳じゃないんだよな?」 だとしたら、大問題だけど。 「あ、当たり前だろ!!」 ・・・だったら。 「何で三島、ここ出て行こうと思ったんだ?」 そこんとこがよく分からねぇ。別に、俺がどんな夢見てようと、さっさと始末しといて後は見なかったふりして・・・とかで、いいんじゃないのか? 『バカだな〜、そんなのも分からずに出ていくの止めるとか言ってたんだ?見てたらわかるじゃん、コーリンはお前のことす・・』 「わーーーーー!!わーーーーーーーー!!!」 トロなんとかが口を開いた瞬間、三島が突然騒ぎ出した。 ・・? なんだ? 「何言ってんだよ!!!」 『言ってないよ、まだ。』 「まだって何だよ!!」 ・・・・・あ。 「・・・そいつに言われたのは、“お前を幸せにしてやってくれ”ってことだったんだけど」 そう、それが向こう側のメリットで。 「・・・もしかして三島って、俺のこと好き・・?」 もし外れていたら、取り返しのつかない状況。 あるはずのない答え。 だけど・・・だとしたら、全部当てはまるんだ。 「・・・・・・・・・っ」 うおぉ、解りやす・・・っ! 三島の顔が朱に染まる。 ・・・・・、くそ、俺まで照れてんなよ。 「・・・・っそうだよ・・! だから何!? 笑いものにでもするのかよ、だから出ていくつもりだったのに!!!」 あー・・・半分パニック起こしかけてる・・? あのな、俺だって別に言おうと思ってたんじゃねぇよ。ぽろっと気づいたときに言っちまったんだよ。 ・・・あぁもう、・・頼むから、泣くなよ? 「違うって・・・嫌なんだよ、そういうの。そりゃ気まずいから避けたいとか、そんなことは思うだろうけどな。お前けっこう面白いヤツだと思い始めたとこなのに、出て行くとか言われたら嫌だ」 ガキみたいなこと言ってっけどさ。 ・・・・・・けど、すきとかきらいとか関係なくても、そう思うから。 それが俺を思っててくれる奴なら、尚更。 「・・・せっかく初めて話とかだってしたのに、もったいねぇだろ」 「・・・・・気持ち悪くないのか」 「あー・・そんなん、お互い様だろ。俺のことどうでも良かったら、たぶんさっさと俺の夢なんか喰われてただろうし」 ・・・・そう。ホントなら軽蔑してもされてもおかしくない。だけど。 「あ、でも、別に特別すきなわけでもキライなわけでもねぇんだけど」 ・・ってとんでもないこと言ってねぇ?俺。 期待させといて・・って思われたかな。けど・・・本心。 「・・・・・・よかった。・・うん、それで良いよ。もういっそ、嫌ってくれたほうが楽だったんだけど」 そう言って、三島は微笑う。 「俺と一緒にいてもロクなことないし、つまんないし、大体、人間と夢魔じゃ、一緒になんかいられないって分かってたし」 ・・・・なんか。それで、諦めようとしてた、みたいな。 ・・ものすごく、嫌だ。 「・・・そんな、つまんないことでかよ・・・・」 「・・・?」 目の前の顔が、眉をひそめる。 「・・・・・そんなこと言うなら、俺のここ三日の時間を返せ。今すぐ。・・なんだよ、こんな悩ませといて」 「ごめん・・」 「そうじゃなくて! ・・・謝ってほしいんじゃなくて・・。例えば、この人は別の野球チームのファンだから結婚できません、って言ってるみたいなもんだぞ? んーなバカな話があるかよ」 まったく、冗談じゃない。俺はちゃんと気づいたのに。 ・・・・少なからずこいつに興味を抱いている自分自身に。 「・・俺にとってはバカな話じゃないんだ。」 『・・コーリン』 「だってそうだろ? 俺は人間じゃないし、男だし! そんなの嫌に決まってるだろ!?」 こいつの、こういうとこ、嫌いだ。 「なに始まってもいない内から終わろうとしてんだよ」 全部、溜め込んで、押しつぶされて、自滅する。 「すきならすきって言えばいいだろ!?男だってんならちゃんとぶつかって来いよ!そんで、当たって砕けろ!」 『いや、砕けちゃ駄目だろ』 はっ・・・いかん。余計なことまで言っちまったみてぇ。トロなんとかのツッコミが容赦なく入る。 「・・・と、とにかくだ。俺は、そうやって諦めてる三島は全くもって好きじゃない。だから、せめて俺に好かれるように努力くらいしたらどうなんだよ」 ・・なんかケンカ腰だけど、言いたいのはそれだけだ。 少なくとも俺は、すきな奴振り向かせる努力くらいしてみせる。 ・・・・報われなくても。やるしかないし。 それくらいするべきだ。 ・・・それからなんだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 戻る << BACK NEXT >> |