[ 1 ]
 
 [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 / おまけ ]


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


夜が来た。
約束を守る時間だ。・・・もう、わがままは通用しない。

「・・・なぁ、トロステン。」
『ん?』
「行くか帰るか、どっちがいい?」
三件目の家の屋根で、そうきりだした俺に、少し考えてからトロステンは言った。
『・・他の選択肢はないの?』
「ない。」
『きっぱり言うねぇ・・・じゃ、帰る方かな、ひさしぶりにみんなにも会いたいしさ』
昨日までの覇気のない声とは大違いだ。そう言ってトロステンはにやっと笑った。
「・・・余計なお世話だよ」
・・・・・・本当。確かに昨日までは悩んでたよ。
けどさ。これ以上なんともならないことを、ずっと考えても、なんとかできるわけじゃないし。
逃げるわけじゃないけど。
だって俺は夢魔だから。
規則とかじゃなくて、これは初めて俺が決めたことだから。




俺は護るよ。


今日はいい日だ。



『よし、んじゃさっさと片づけちゃおうか。』
明るい調子でトロステンが誘う。
お前って実は優しい奴だったんだな。
・・・・・前から知ってたけど。
「あぁ」
俺も何気ないふうに言う。

えぇと・・・・・まずは一昨日の記憶からだな。


・・・・あの夜の夢。


木場に、抱かれた夢。

あのな、



ひとつだけ言っておくよ。



俺を中心に、一つの円が描かれる。
光の渦。
記憶を失くすやり方は、ちょっと複雑でやりづらい。
頭をひねって術式を思い出す。よし、大丈夫だ。明け方、飽きるほど復唱したし。

風が飛ぶ。耳をつんざくような音がして、思わず耳を塞ぎそうになる。

「・・・・・・・悪くなかったよ。」


俺は、手を木場の上にかざした・・・・・・・・・・と、思った。
が。


「・・・・・・よ。やっぱ今日も来たな、三島」


だ、れ、
温かい指が、手首に触れている。


・・・・木場?

なんで

・・・・ここに、


・・・起きてるんだ・・・・・・・・?

「来ると思ってた」

・・・・・っ、なんで・・・えぇぇぇ!!?

「なんで・・・っお前寝てたんじゃ・・!」
「そーれーがー・・・」
ちら、と、木場がむこうを向く。

・・・・家具・・???

『あ〜も〜バッカだなぁ、こっちこっち。見当はずれの向き指すなよな』
・・・は?
「そんなん知るか、アホ。見えてねぇんだからしょうがねぇだろ」

・・・・・!?

「トロステン・・・・?」
が、どうして。
木場と仲良さそうに(?)話しているのだろうか。
・・・・・・誰か説明してくれ・・・。

俺が白くなって風化しているのを見て、話し出したのはトロステンだった。
『・・・・えーっと・・だから』
「・・・」
『・・ドッキリ大作戦☆』
「頼むから宇宙言語で話さないでくれ。」
・・・つくづく、こいつの話には筋が通っていない。

「・・・・今日な、俺が何やってたか知ってるか・・・?」
さらに追い打ちをかけるように、木場が言った。
・・・・今日?
そういえば、今日はあんまり見かけなかったかも。
できるだけ視界には入れないようにしてたけど、あまりにも見あたらないので、それはそれで、実は気になっていたんだ。
言っとくけど、あくまでクラスメイトとしてなんだけど。

俺が考え込んでいると、木場がにやっと笑って言った。

「実はさ、今日一日、お前の後つけてたんだ。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戻る
     << BACK     NEXT >>