[ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 / おまけ ] ++おまけ++ 翌日の俺は、朝からばたばたしていた。 迷惑をかけてごめんと謝る三島に、結局こんな手を打つことにしたのだ。 三つの願いを叶えてくれ・・・と。 我ながら子供のようだと思いながらも、これしか、奴を黙らせることが出来なかったからだ。 ・・・これで分かった。あいつ、基本的に気遣い屋なんだな。 一つ目の願いは即刻決まった。 「あいつを俺にも見えるようにしてくれ」 ・・・これは必須だろう。これからもからかわれ続けたらたまらないし。 二つ目の願いでは、三島に、当分この町を出て行かないことを約束させた。 俺がそう言うと、三島はどこか嬉しそうな顔をしていた。その後で、気づいたように苦笑しながら言った。 「転校中止になったこと、先生達に説明するの大変だ」 また術か何かで、パパッとできないのかと問うと、それがそうもいかないのだと返された。・・・夢魔の世界も、あれはあれで、なかなか大変らしい。 そして、最後の願いは・・・・・ ベッドの中で、俺が目をこすっていると、光架が部屋へと入ってきた。 我が妹は、今日もご陽気だ。っていうか、テンション高すぎだし。・・・お前には、デリカシーってもんはないのか。 「お兄ちゃん! ・・あれ? また変な夢見たの??」 ・・・いや、おかげで安眠はできたけどな。今度は睡眠時間が足りねぇ。 「そういうんじゃねぇよ。・・・っていうか、何だよ朝から・・・・」 「あーっ、そうそう、そう言えば、こないだの夢診断の“独占欲”は“囚人”の夢見たときだったって〜。ごめん、間違ってたみたい」 ・・・・・・。 ふーん・・別にかまわないよ、もしそれを俺がほぼ一日中気にしてたとしても、関係ないよ、君には、うん!!! 俺がどんなに腹の内で光架を呪おうと、無邪気な妹の目には、そんなことはささいなことにしか映らないのだ。 ちくしょう、光架め。後で、それと知れない報復をお見舞いしてやる。 「そうだ、お兄ちゃん。お母さんが、“早く起きろー”って」 ・・・そうだ。とりあえず、朝メシ・・・は時間がないか。 しかたがない、母さんには、弁当でも作らせよう。今月、金無ぇし。 それに、それなら、ちょうどいいし・・・・・・。 そこまで考えて、俺はひとまず、階段を獣の勢いで駆け下りたのだった。 授業が終わったことを告げるチャイムが鳴る。 ぐぅ〜〜・・・。 朝メシを抜くと、さすがに二時間目終わってすぐでもキツイ。 こうなったらもう、恥ずかしいもクソもねぇしな。 ま、明らかに不自然極まりないだろうが、仕方がねぇ。 「腹減った。お前も付き合え。」 遠くから声をかけ、振り向く前に制服の襟元を掴んで。 「え・・・っ!?」 何かを言い出す前に、俺の席まで連れて行く。 おもむろに、弁当箱を取り出して。 「お前の分ももらうからな」 ・・・・腹減ったんだよ、悪いか。 俺が朝メシ食えなかったのも、少しはお前にも責任あるんだし。 いくら恥ずかしかろうと、後悔しようと、眠れなくとも、いつの日も、変わらず食欲は訪れるのだから。 違うことと言ったら、隣にこいつがいるってことくらいだが、構いはしない。 空腹を満たすのは、いつだって、その日の糧と、充足した時間によってでしか有り得ないのだから。 “最後の願いは・・・・・・とりあえず、明日、メシでも一緒に食うか?” おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 戻る << BACK |