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++おまけ++

翌日の俺は、朝からばたばたしていた。

迷惑をかけてごめんと謝る三島に、結局こんな手を打つことにしたのだ。
三つの願いを叶えてくれ・・・と。
我ながら子供のようだと思いながらも、これしか、奴を黙らせることが出来なかったからだ。
・・・これで分かった。あいつ、基本的に気遣い屋なんだな。

一つ目の願いは即刻決まった。
「あいつを俺にも見えるようにしてくれ」
・・・これは必須だろう。これからもからかわれ続けたらたまらないし。

二つ目の願いでは、三島に、当分この町を出て行かないことを約束させた。
俺がそう言うと、三島はどこか嬉しそうな顔をしていた。その後で、気づいたように苦笑しながら言った。
「転校中止になったこと、先生達に説明するの大変だ」
また術か何かで、パパッとできないのかと問うと、それがそうもいかないのだと返された。・・・夢魔の世界も、あれはあれで、なかなか大変らしい。

そして、最後の願いは・・・・・

ベッドの中で、俺が目をこすっていると、光架が部屋へと入ってきた。
我が妹は、今日もご陽気だ。っていうか、テンション高すぎだし。・・・お前には、デリカシーってもんはないのか。
「お兄ちゃん! ・・あれ? また変な夢見たの??」
・・・いや、おかげで安眠はできたけどな。今度は睡眠時間が足りねぇ。
「そういうんじゃねぇよ。・・・っていうか、何だよ朝から・・・・」
「あーっ、そうそう、そう言えば、こないだの夢診断の“独占欲”は“囚人”の夢見たときだったって〜。ごめん、間違ってたみたい」

・・・・・・。

ふーん・・別にかまわないよ、もしそれを俺がほぼ一日中気にしてたとしても、関係ないよ、君には、うん!!!

俺がどんなに腹の内で光架を呪おうと、無邪気な妹の目には、そんなことはささいなことにしか映らないのだ。
ちくしょう、光架め。後で、それと知れない報復をお見舞いしてやる。

「そうだ、お兄ちゃん。お母さんが、“早く起きろー”って」
・・・そうだ。とりあえず、朝メシ・・・は時間がないか。
しかたがない、母さんには、弁当でも作らせよう。今月、金無ぇし。
それに、それなら、ちょうどいいし・・・・・・。

そこまで考えて、俺はひとまず、階段を獣の勢いで駆け下りたのだった。


授業が終わったことを告げるチャイムが鳴る。
ぐぅ〜〜・・・。
朝メシを抜くと、さすがに二時間目終わってすぐでもキツイ。
こうなったらもう、恥ずかしいもクソもねぇしな。
ま、明らかに不自然極まりないだろうが、仕方がねぇ。

「腹減った。お前も付き合え。」
遠くから声をかけ、振り向く前に制服の襟元を掴んで。
「え・・・っ!?」
何かを言い出す前に、俺の席まで連れて行く。
おもむろに、弁当箱を取り出して。

「お前の分ももらうからな」
・・・・腹減ったんだよ、悪いか。
俺が朝メシ食えなかったのも、少しはお前にも責任あるんだし。

いくら恥ずかしかろうと、後悔しようと、眠れなくとも、いつの日も、変わらず食欲は訪れるのだから。
違うことと言ったら、隣にこいつがいるってことくらいだが、構いはしない。

空腹を満たすのは、いつだって、その日の糧と、充足した時間によってでしか有り得ないのだから。



“最後の願いは・・・・・・とりあえず、明日、メシでも一緒に食うか?”



    おわり




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